──魚の干物を夕食に、その夜はベリルが火の番をする。
時折、虫の声と夜の鳥が鳴く静かな森の暗闇は、不安というよりも何かに護られている安心感がある。
パチパチと耳をくすぐる焚き火の音に、ベリルは目を閉じた。
森の精霊──それは、この場所が聖なる力に満ちているという証だ。よって、邪悪の性質を持つモンスターは立ち入る事が出来ない。
それが、落ち着いた領域を作りだしている。
とはいえ、イレギュラーである我々にそれがどこまで適用されるのか疑わしい。警戒を怠らぬようにせねば。
ふいにティリスが隣に腰掛けた。物憂げな面持ちが炎に照らされて、ベリルも問いかけるでもなく無言の時間がしばらく続く。
にわかに、
「あたしね。リュートが好き」
目を合わせず、小さく笑ってすぐに表情を曇らせる。
「あたしたちの世界じゃ、魔族は人間の敵なの。リュートは半分、人間だけど」
続く言葉が心にひしめきあって固まり、喉を詰まらせる。
募る想いを誰かに話せたならと巡り来た機会に感情が急いていた。
†††