クライシス・ゾーン~翡翠の悪魔~

 
 ──そうしてレキナたちは二日をかけて岩山を越え、傾きかけた太陽を確認して眼前の森に入る。

 木々が広い間隔で立ち並んでいるため、荷馬車も余裕で通る事が出来た。

 とはいえ、真っ直ぐに伸びる高い木々の根が地面をうねり、進みやすいと言えば嘘になる。

「この森は精霊に護られています。安心して抜けられますよ」

 そう説明されたからなのか、とても落ち着いた気配が感じられた。

「ここでひと晩、過ごしましょう」とレキナ。

「精霊はウィロクルと言って、男の精霊です。美しい女性を見つけると口説くそうですよ」

 それに、リュートの顔が険しくなる。

「ほう? それは少女も対象なのか」

「さあ。そこまでは解りません」

 シャノフはベリルの問いにリュートを一瞥し、まずいことを言ったのかと乾いた笑みを貼り付けた。

「で、でも。無理強いはしないはずです。断られたら素直に引き下がりますよ」

 なんたって善き精霊ですから!