「ありがとう」

 さっそくコップを手に取り、口に運ぼうとしたティリスをリュートが制止して先に自分の飲み物を口にした。

 ひとくち含み、大丈夫だと確認してからティリスにも促す。

 見たところ、少し濁った水ともとれる。ココナッツジュースのような、さっぱりとした味わいだ。

 ほどなくして、杖を突いた人物が現れた。毛並みは多少、悪いようだが足腰はしっかりしている。

「長老のゼキノです。僕の祖父です」

 ゼキノは一度、会釈して腰を落とすと長く伸びたあごひげをさすり、リュートたちをじっと見やる。

 そうして、しばらくの沈黙のあとフェネック──もとい、コルコル族の長老は小さく唸った。

「実はの」

 そう言って隣にいる孫に視線を向けた。

「僕たちの集落の近くに、とても強い魔物が住み着いたんです」

 長老の孫であるレキナは苦い顔をした。ここまでベリルたちを案内してきた者だ。

「僕たちの仲間が、何人もそいつの餌食になって。戦ったのですが、とても敵う相手じゃなかった」

 あんな魔物は見たことがありません。