「あんたの世界では、珍しくないのか」

 リュートは固まっているティリスを横目に問いかける。

「生憎、成功したのは私だけでね」

 これが知られるのは問題なのだが、ここなら話しても構わないだろう。

 そう語るベリルの瞳からは不安の色は感じられない。言えなかった事を、誰かに話せたという嬉しさも見て取れない。

 隠す必要もないから話した──ただそれだけなのか。

「さながらホムンクルスといったところか」

「なんだそれは」

「おや。お前たちの世界ではフラスコの小人も存在しないのか」

 或いは、概念が異なっているために伝わらないのか。

「錬金術という手法を用いて造られる生命体の事だよ」

 解らなくともなんら問題はないのだから、面倒な説明はこれ以上はやめておこう。

「いや、しかし。ホムンクルスはそんなに長生きは出来ませんよ」

 真面目にシャノフが返答した。