クライシス・ゾーン~翡翠の悪魔~

「必要ない」

 傷口に添えるティリスの手を煩わしそうに避ける。

「でも──!」

 言い返そうと顔を上げたとき、ベリルの体が倒れ込み、側にいたリュートがそれを支えた。

「痛みで気を失ったのか」

 抱き起こし、道の脇に移動する。

 レキナたちが急いで地面に敷いたシーツの上に横たえる。その間にも、腕に残る酸が肉を侵蝕している事が窺えてリュートは眉を寄せた。

「酷い……」

 間近で見ると、腕は想像以上に悲惨な状態だった。骨まで達した牙で内部まで酸の侵蝕が激しい。あまりの様子にティリスは声を震わせる。

 これでは腕を切り落とすしかない。

 しかし──

「凄いな」

 信じられない光景に、リュートは思わずつぶやいた。

 見るも無惨だった腕の傷が、驚くほどの速さで治癒していく。魔法などという、外部からの技法なんかじゃない。

 こいつは不死身なのだと確信した。