──青年は眼前の風景に、険しい表情を浮かべた。

 目にも涼しげな青々とした草原が拡がっている。背後には森があり、遠くに見える切り立った山々の(いただき)はうっすらと白く、雪に覆われている事がほのかに窺えた。

「夢──では、なさそうだ」

 青年の名は、ベリル・レジデント。年の頃は外見からして、二十五歳ほどだろうか。

 (わず)かな風にもなびく、柔らかな金のショートヘアと整った顔立ち、神秘性を滲ませる鮮やかな緑の瞳に引き締まった体は、そこにいるだけで誰もが魅了されてしまう。

 本人の口から傭兵だと聞かされても、にわかには信じがたいほど上品な物腰ではあるが、彼はれっきとした傭兵である。

 観光で来たならば、それは良い景色だと感嘆するだろう。しかし、彼はここを訪れた覚えはない。何が起こったのかと、草原を見渡しながら記憶を呼び起こす。