「殺されたなんて知らなかったんで、、、すみません」

伊井田が頭を下げる。

「大丈夫。これからは貴方とパートナーなんだからお互いの事知らなきゃ」

明らかに天宮は無理して笑っている。
伊井田も笑うが、とてもぎこちない。

「それ、凄く綺麗ですよ。ルビーですか?」

伊井田には、それが天宮にかけられる精一杯の言葉だった。

「宝石はあまり詳しくないの。でも、多分そうだと思う」

「随分大きな宝石ですよね」

「本当に私が貰っていいのか、最初は戸惑ったわ」

クスッと鼻で笑って、

「貴方の事も教えて」

天宮は言った。


2人が話し込んでいる間に西野課長が帰って来た。

「おかえりなさい」

天宮と伊井田は軽く頭を下げて言った。

「すまんすまん。早く帰れる筈が知人に会ってね。、、、もう帰って大丈夫だ。留守番ご苦労様」

「じゃぁ、私はお先に失礼します」

天宮は両手を天井に突き上げ、背伸びをしながら言う。

「送って行きますよ」

慌てる伊井田を見た天宮は、

「仁の真似してるの?私車だから大丈夫よ。ありがとね」

と、微笑む。

「そうですか、、、じゃぁお気を付けて」

「ありがと。それじゃぁお疲れ様でした」

三日月が闇夜に浮かぶ中、天宮は家へと車を走らせた。