天宮は窓に手を掛け飛び降りた。
ここは三階。
飛び降りたら死んでしまう。
死は無くとも大怪我は免れない。

伊井田は「あっ」と声を漏らす。
だが、一度下に姿を消した天宮が上へ上がって行く。
ヘリだ。
天宮の右手には縄梯子が握られていた。
他にも部下が居たのだ。

伊井田は驚いて声も出ない。
未だに体が動かず、床に尻を突いていた。
そんな伊井田を余所にヘリはどんどん遠ざかって行く。

月明かりで天宮の胸元のルビーがキラリと光った。

辺りは静まり返った。
部屋には秒針が時を刻む音が響く。
そして時刻は丁度9時を指していた。