「三瀬、口を滑らしましたね」

伊井田は前を向いたまま言った。

「何故あのまま問い詰めなかったの?」

「あのまま問い詰めて三瀬が全てを話したとしても、僕は憶測でものを喋るのが嫌いなんです」

伊井田は一度足を止めた。

「三瀬が黒猫の部下だと裏付ける証拠が欲しいんです。すいません、勝手な事して」

伊井田は頭を下げる。

「謝らないで。訳が知りたかっただけだから」

天宮は励ますようにニッコリと笑って見せた。

「これからどうするの?」

「今から科捜研の方に行きます。前に黒猫からの電話を録音したテープを調べて貰っていたんです。それで結果を聞こうと思って」

「何を調べて貰ったの?」

「電話の発信場所です」



今は伊井田に連れられ科捜研に来ている。
事件調査などで度々協力して貰っていたが、天宮にとっては初めての場所だ。

「伊井田くん」

白衣を着て、黒縁眼鏡を掛けた男が歩み寄って来た。

「お久しぶりです」

伊井田はその男と握手をしている。

「彼は僕の学生時代の先輩で科捜研の音声分析担当の、、」

「神夜慎二(カミヤシンジ)です。宜しく」

「此方こそ。天宮亜理紗です」

天宮も握手を交わす。

「場所、、、解りましたか?」