その言葉を聞いて一瞬だが三瀬の顔色が変わった。
それを天宮は見逃さなかった。

「黒猫?知らねぇな」

三瀬は動揺しているのを隠すかの様に足を組み、体ごと右を向いた。

「貴方が知らない訳無いでしょ!?黒猫本人が言ってたんだから」

三瀬の態度に腹を立て、天宮は目の前の机を思いっきり叩く。
その音の所為で部屋は静まり返る。

「アンタは黒猫を見た事あるのか?」

沈黙を破ったのは三瀬だった。

「それはッ、、、、」

天宮は痛い所を衝かれ、先程の勢いは無くなってしまった。

「電話の相手が黒猫だって証拠も無しに、黒猫本人が言ってたなんてよく言えんな」

三瀬は誇らしげに言う。
彼の言っている事は間違ってはいない。
天宮は唇を噛んで黙ってしまった。
しかし伊井田は違った。

「何で電話だと判ったんですか?」

伊井田は真っ直ぐ三瀬を見詰める。
三瀬の額には微量の汗が噴出していた。
三瀬は黙り込んでいる。

「それではまた来ます」

そう言って伊井田は立ち上がり部屋を出た。
天宮は伊井田の背中を追う。