一日中美術館を見張っているのはとても大変な仕事だ。
その日は日が暮れるのと同時に天宮は帰って行った。
警視庁に残っているのは、西野課長と伊井田だけである。
天宮が帰ってから、しばらくすると電話が鳴った。

「はい。此方港区警視庁です」

西野課長が電話に出るが、顔をしかめ直ぐに電話を切った。

「至急S美術館に向かう。ブルージルコンが盗まれた」

西野課長と伊井田は現場に急行した。
途中、天宮に電話をしS美術館に向かうよう伝えた。


S美術館に着くと、既に青い制服を着た鑑識係が行き来していて、その中には徳井と杉本の姿もあった。
後ろから足音が聞こえる。
、、、天宮だ。
風呂に入っていたのだろう、肩までの短い髪が湿っている。

「すみません、遅れました」

その声に気付き、徳井が小走りで此方にやって来た。

「遅刻ですか？亜理紗ちゃん」

徳井はニヤつきながらワザとらしく敬語を使い、「ちゃん」付けまでして天宮をからかう。
天宮は何も言わず徳井を睨みつける。

「冗談だから。そんな目で見んなよ」

徳井は苦笑いをして見せた。
天宮はパッと顔色を変え、

「指紋は見つかった？」

と、仕事モード全開。
徳井は困った顔をして、

「いや。でも何処かにある筈だから」

そう言って徳井は仕事に戻った。