満月が出るであろうこの日は、朝からS美術館に行って、全ての出入り口とブルージルコンの見張りをしている。
満月が昇った頃に来るとはいえ、本当に来るとは限らないからだ。

あっという間に日は暮れ、空には満月が顔を覗かせていた。

「そろそろですね」

そう言った伊井田の横顔は頼もしく見えた。
天宮と伊井田はブルージルコンの前で見張りを朝から続けている。
外では他の刑事達が見張りをしていて、その中には西野課長も居た。
夜になると美術館はライトアップされて見とれてしまう程綺麗であった。
そんな美術館を見てしまうと黒猫が来るなんて嘘のようだと、天宮は思った。


それからどれくらい見張りを続けていたのだろう、
夜は明けていた。

「夜が明けちまった」

刑事達が、口々に言っているのが聞こえる。

「狙われていた物がブルージルコンじゃない可能性があります。手分して全ての展示品のチェックを」

天宮はそう言って走り出した。
伊井田もその後に続く。
展示品を確認した結果、盗まれた物は無く、特に異常は見られなかった。

「確かに昨夜は満月が昇っていたんだが、、、推理が正しくなかったのか!?」

西野課長は頭を抱えている。

ただのイタズラ電話だったのか、それは誰にも解らない。