「撮影してもよろしいでしょうか?」

伊井田はデジカメを取り出して聞く。

「はい。大丈夫です」

撮影禁止の札があるが簡単に許可が出た。
伊井田は、

「ありがとうございます」

と、言って撮影を始めた。
今日は休館日で特別に開けてもらっているのだ。
当然この美術館に居るのは、天宮と伊井田、館長の大蔵。あとは美術館関係者のみだ。
伊井田の撮影が終わると次の展示品へ案内された。

今回はとてもユニークな展示方法の女性の全身像。
胸の所で両手でハートを作り、
その中にアレキサンドライトが納まっている。

その後も展示品を見て回った。
伊井田は全ての展示品を撮影した。

天宮と伊井田は館長の大蔵に礼を言って美術館をあとにした。

「めぼしい物はありませんでしたね」

車の中で伊井田は溜め息混じりに言った。

「とりあえず、貴方の撮影した物を見直さないと」

「そうですね」

伊井田は苦笑いをした。