今、天宮は伊井田と一緒に美術館を調査している。

S美術館は宝石専門でユニークな展示の仕方をしている。

例えば猫の置物の「瞳」部分に宝石の「キャッツアイ」をはめ込んでいたり、
「涙」と言う題で、石像女性の顔の頬の部分に「サファイア」を散りばめてみたり。

黒猫が残したヒントが展示の仕方を示すのだとしても到底見つけるのは困難だ。

世界で発見された宝石をこの美術館では、3分の1が展示されている、とS美術館の館長は言う。

一体黒猫はどの宝石を盗むというのだろうか、、、。

「当美術館では“手”に関する展示方法は沢山あります」

彼はS美術館の館長、大蔵貞夫(オオクラサダオ)は額から噴き出る汗をハンカチで丁寧に拭きながら言った。

「その展示品に案内していただいてもよろしいですか?」

天宮は一つ一つ見て回るつもりのようだ。

「では、付いて来て下さい」

天宮と伊井田は大蔵に案内され、一つ目の展示品の前で足を止める。

「此方です。これは石像女性の爪の部分に水晶を埋め込んだ物です」

確かに2人の目の前には大蔵が説明したとうりの物が展示されていた。