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幼い頃に読んだ、女の子に向けられて書かれたと思われる、遠い遠い昔のお伽話。






だけど俺はこの話に強く惹かれた。





――人魚姫の哀しい、叶わなかった恋の物語。






何を想って、何を感じて。


想像しては、何度も読み返した。





そして今も、そのお伽話は俺を捕らえては離さない。



何度も読み返した、人魚姫の物語。


それは今も、俺の部屋の片隅にあるんだ。



まるで誰かを、待つように。