人魚姫。 それは荒れ狂う海で溺れかけた一人の王子様を助けた人魚の女の子のお話。 海が何より大好きだった。 ――溺れかけた人間の王子様に恋をした。 美しい声と引き換えに、足を手に入れた。 痛む足を引きずり、それでも王子様の傍にいることを望んだ。 でもやがて王子様は声のでない人魚姫ではなく、別の娘を命の恩人と勘違いし、その娘を迎え入れた。 それは人魚姫の、命の宣告を突き付けられた瞬間(とき)だった。