そんなここには、王様達などが身につけていた装飾品、有名な画家の絵画と同じくらい、厳重に護られている物がありました。




それは宝石のように輝くガラス細工。



そのガラス細工は自色が海の色でありながら、七色に輝くガラス。



それは悲しげに、時折光を受けては更に輝いて。





まるで誰かが流した涙のようでした。








それを作ったという人の名は誰も知りません。



だけど、その村に住む人達は誰も知っています。


その人の名を。






見れば誰もが欲し、誰もが釘付けになり、その虜になるガラスを生み出したその人の名、を。









人々はそのガラス細工を「人魚の涙」と呼びました。






そして今も人々を魅了し、そこに静かに飾られているのです――。