店を出ると

冷たいグラスを

肌に押しつけられたような

12月の風と

雪が降っていた。



「とにかく付いてきて

くださいね」

とタクシーを捕まえようと

必死に手を挙げながら

加藤が言った。



もう1件行けば

終電はなくなる時間だった。



今日で仕事は一段落して

いたし、まだ現実には

戻りたくなかった。


「しょうがないなぁ...」

と言いつつも、

本当は加藤の言葉に

甘えたかった。



そして誰かが

「行け」


と背中を押したような

感覚があった。


その感覚に従い、

タクシーに乗り込んだ。