「なんだどうした。なにいい年こいて噴出してる。汚いな。」



「お前のせいだろぉぉぉ!!!」


馬鹿にしてる。絶対に。もちろんあまりの不味さにも噴出した。

がしかし。

睫毛入ったとかまじふざけんな。

焦っただろうが。どこまでおちょくってるんだ!


げほげほと気管支に入った液体にむせ上がりながら俺は言いたいことを脳内に羅列する。


それを見てこちらに回り込み背中を無言でとんとんと叩かれては怒る気も失せ、脳内に並べられた言葉ははき出すにはき出せなかった。


解ってやっているのか、まったくたちの悪いやつだ。


「ごほっ…はぁ。」

「おぉ。直ったようだな。」

「おかげさまでな!」


皮肉たっぷりに言ったつもりが


あぁ、と変わらぬはずの表情が少し和らいだように見えてよくわからない感情がこみあげた。



はぁ、


「まったく、ぶざけやがって…」

半ば諦め気味に吐き出した言葉は物ない部屋に反響した。

青臭くてくそ不味い液体を一気に飲み干して立ち上がった俺は

「ご馳走様。じゃぁ、帰るから。用心することだな。」

といって鞄を持ち上げた。


玄関に向かって歩く俺の後を追う音を背中で聞きながら


もう引き止めても無駄だ…悪いがこんな時間まで女生徒の家にいることさえまずいんだ。


こんな部屋で心細いだろうが…

なんてことを考えていた。こいつがどういう奴かも忘れて…


「じゃあ、また、明日な。もう屋上にはくんなよ。」



「あぁ。また明日、屋上でな」


どんっ


ばたんっ


「…………」


おい。今なにが起きた…?


俺の目の前には薄汚れたドアがそびえたっている。



………………




「はぁぁぁぁあ?!」



出されたよな?


突き飛ばされたよな?


しかもなんつった?



(あぁ。また明日、屋上でな。)





「ふざっけんなぁぁぁぁあ!!」



どかっ!!!!!!!!



どごっ
がしゃんっ
ばたんっ…



「おい…そこでなにしてる…」