きっかり60分あたしの尻を叩き続け
ソラ様は勝手に射精した。

放出するとすぐに縛られたあたしの手首は解放される。

あたしはシワだらけになったワンピースを1度脱ぎ
裸でベッドに座った。
シーツの肌触りが気持ちいい。
ヌルリと冷たい。

ソラ様はあたしの裸に興味を示さない。
興味があるのはM女として喘ぐあたしの尻だけ。
壁一面に貼られた鏡に映るあたしの尻は紫色に腫れていた。
大きな尻だ。

「ありがとうございます」

そう言うあたしの存在などまるでゼロであるかのように
ソラ様は無言でネクタイを締め直している。
40歳にも見えるし60歳にも見える。
会うたびに痩せてゆく。
そして老いてゆく。
死に近づいてゆく。

あたしは曇りガラスの窓を開け湿った空気を部屋に入れた。
山の手線がすぐ目の前を走る。
大崎方面に向かう電車はガラガラ。
まるで回送のようだ。

「次はいつ出勤だ?」
ソラ様はアルマーニのジャケットに袖を通しながら聞いた。
「来週の水曜まで毎日出ます」
「そうか」

ソラ様は優しい。
優しい御主人様。
優しさの上に成り立つサド。
虐める相手に対して愛おしさを持たなければ
サドは成り立たない。

Mとして生きるあたしにはよく判る。



ソラ様はあたしを愛している、と。