香港から高速船で1時間。
汗はワンピースを湿らせた。
ヌルヌルする。
肌から大量のオイルを噴出しているかのようだ。
性的欲望に耐え切れなくなった本能の具現化みたい。
ひどく卑猥。


マカオにようこそ


へたっぴな日本語の看板。

太陽が日本より低い位置にある気がした。
実際そうなのかもしれない。
犬の唸り声が聴こえる。
幻聴?
犬なんてどこにもいない。
海外は、あたしを興奮させる起爆剤。

ホテルのシャトルバスの中で、
あたしは空気の匂いが違うことに気がついた。
生き物の匂いがする。
そう思った。
「生き物の匂い」
断言しているようで、ひどく抽象的な表現。
あたし自身、「生き物の匂い」の根拠なんて言えない。
ただそう感じたのだ。

インスピレーション

あたしはそれを大事にしている。
日本では感じることの無い匂いだ。
生々しい匂い。
密度はあるが、決して鬱陶しくはない。
生き物の匂い=性的な匂い

バスが揺れるたびに、太陽の光があたしの目をキラリと射す。

マカオ本土に連なる小島「タイパ島」
そこにある小さなホテル。

〈Deep sea in Portugal〉

日本の旅行代理店で選んだ。

ポルトガルの深海

良い名前。

そう思った。

チェックインすると、そのままベッドに倒れ込んだ。
大きな大きなため息と共に深い深い眠りについた。