冷蔵庫にマグネットで貼り付けられた紙幣。

もう貼るスペースがなくなってきた。

あたしはいつものようにコーラを取り出す。
心地よい炭酸の抜ける音。

ノドを鳴らしながら飲み続けた。
灰色の紙幣を眺めながら飲むコーラ。
数え切れない1万円札。
コーラがインクの味に思えてくる。
たくさんの札を前にしても、そこに快楽はない。
むしろ苛立ち。
不快感。

あたしは貯めたこの金を使って何をするのか?

コーラを飲み干す前に思いつこうと努力してみる。
考える
考える
考える

そんなあたしを見て笑う福沢諭吉。

福沢諭吉


福沢諭吉



幾人もの福沢諭吉

あたしは途中からコーラを口の中に貯め始めた。
笑う福沢諭吉
幾人もの福沢諭吉
極限まで口に貯めたコーラ

それを一息で冷蔵庫に向い吐き出した。
黒く濡れる福沢諭吉
幾人もの福沢諭吉


(あたし)と(冷蔵庫)の間に流れ出す沈黙という血液。


ソラ様に叩かれた尻が痒い。
あたしは内出血で青くなった尻を掻きながら
ベッドにもぐり込んだ。
そしてあっという間に眠りだした。