いきなり駆け込んできたかと思えば、両目いっぱいに涙を溜めて、しばらくするとせきをきったように泣き出したからだ。 周りにはちらほら他のお客さんがいたので、かん吉はカウンターの奥からつながっている自宅のリビングへと杏を連れていった。 「紗香ー、ちょっと店頼む!」 キッチンにいた紗香が振り向く。 「ちょっと!!杏ちゃん?どうしたの?」 「それを今から聞くから!まだお客さんいるんだ、店よろしく!」 かん吉は笑顔で紗香にそう言うと無理やりカウンターへと追いやった。