「まず最初にさ、行きたいところがあるんだけど…」 翼が車を走らせながら言う。 「うん!!行こ行こ♪ どこ行くの?島根だから遺跡とか?」 「う~ん…そうだなぁ、偉人の家?」 「…いずもたいしゃ」 それは人ではない、と言いかけてやめた。 なにしろこれから行く場所は杏には内緒にしておきたいのだ。 カーステレオから流れる音楽に合わて口ずさまれる杏の歌声を乗せて、 白く雪化粧された海岸沿いを盗難車は進む。