君への距離~クリスマスの奇跡~




「…杏ちゃ…杏さんの


お兄さん?」



確かに5つ年の離れた兄がいるという話は聞いていたけど…



背は翼より少し小さくて、ぱっちりとした黒目がちの瞳。

そして27には、まして子持ちには決して見えない童顔なところも…



やっぱり兄妹は似てるな、なんて呑気なことを思っていると…







「…」










「…」








嫌な沈黙が続く。










「…初めまして、平尾翼です。」






「こちらこそ…水本拓です。


…じゃなくて!







き、き…君は妹の…杏の、か、か、かれ…」






「杏さんとお付き合いさせていただいてます。」






「う…うう嘘だ!」






拓は大きな目をさらに大きく見開くと、動揺しまくりで言った。



拓はそういうと男湯ののれんをくぐることなくその場から走り去った。








翼はぐんぐんと遠ざかる拓の背中を見つめながら、



ああこの兄妹は、走り癖もあるんだな、なんてまたもや懲りずに思っていた。