君への距離~クリスマスの奇跡~





「あれ?」



下にいたはずの翼がいない。




「?」


杏はゆっくりと階段を降りていく。





プップー





アパートの横の駐車場から車が出てきてクラクションを鳴らした。



見覚えのある車…




「シオの?」






杏はそれにゆっくりと近づく。







「翼くん!?」





運転席には、翼。



手を伸ばして助手席のドアを開けてやる。



「乗って乗って!」



翼がニッと笑う。




「あ、うん!」



杏は驚いた表情でおずおずと助手席に乗り込む。




「荷物、後ろおこっか?」



翼は杏のボストンを後部座席に移動させると車をゆっくり発進させた。





「翼くん、この車シオの?」



「うん!」




「…うん、


シオに借りたんだ!」




「ううん!」




「え?」


―嫌な予感





「シオ寝てたし、」



「あー寝てる間にね…」



「うん!だから盗難車だね、コレ」



翼は爽やかな顔で笑っている。




「あはははは…」


杏は渇いた笑い声で答える。




「これで杏ちゃんも共犯だね!!」




「あは…」





「でも大丈夫!一応、シオの免許証も持ってきたし!」




「…」





「もし確認されてもさ、僕とシオ、まあ似てなくもないし!」




「そっか、そっかぁ…


…似てなくもなくもないよね」





翼は助手席でものすごく不安げな表情をする杏をみてまたケラケラ笑い出した。