鳥の唄

だけど口元を見ると彼女は笑っている。


本気では怒ってないようだ。


「ねぇ、君の名前。教えてもらってないんだけど?」


ずっと睨み続けていた彼女に言ってみた。


彼女の顔からは「しまった」というような感情が溢れ出てきた。


「ごめんね?わたしの名前は飛鳥。宜しくね、秋。」


そういって差し伸べられた手。


「はぁ宜しく…。」


ゆっくりと、やさしく手を握り返す。


飛鳥の顔を見ると笑っていた。


機嫌は直ったのかな…と思いつつ、空を見上げた。


雲ひとつない、澄み渡った青空が広がっていた。


まるで海と一体化しそうな雰囲気をだしていた。


「ねぇ、秋。海すきなの?」


隣からひょこっと窓に乗り出してきた飛鳥。


「いや、別に。」


そっけなく答えると、飛鳥はへぇーと言って窓の外を覗いていた。


そうこうしている間に電車が駅に止まる。


「あ、僕もう降りないとだから。」


そう言って飛鳥に退いてもらい荷物をまとめる。


じゃあ、と言って席を立つと「またね!」という声が返ってきた。


もう会うことないだろう飛鳥に別れを告げ、目的の春丘高校へと向かっていった。