……お願い?
依鶴は 真っ直ぐあたしを見る。
「あのエリート執事、わたしに譲ってくれない?」
その言葉は
ゆっくり
ゆっくり
徐々に重たく
あおいの心に食い込んだ。
え?
え?
藤咲さんのこと?
藤咲さんを依鶴の執事にするの?
どう して。
……嫌!!
「…それはっ……」
「かわりに紡郎をあげる。仕事がなくて困っているはずだしね。そしたらまた紡郎に会いにいけるわ」
依鶴は、ふふ、と笑った。
「わたしね、紡郎を執事にしていたんだけど、彼の心はわたしじゃないとこにあった。わたしを見てくれないの。だからあの女から彼を剥がす為に、首にしたの。それから紡郎はわたしから逃げるように姿を見せない。そして、見つけたらあなたのところよ」
背筋がぞくりとした。
依鶴の顔からは、徐々に笑みは消えてゆく。あたしから目を逸らすことなく。下手したら瞬きさえしていないのではないか。

