「顔だけ見たいなら、あたし写真もってるよ、プリクラだけど」

「まさか、ラブキス写真じゃないでしょうね」

「ま、まさか!

桃花ちゃん、妄想し過ぎだよぉ」

あたしは、ゴソゴソと手帳の裏に隠した、懐かしのプリクラを取り出した。

『美女と野獣』、最初のデートの思い出のプリクラだ。

プリクラを手に取るなり、桃花ちゃんの顔つきが見る見る険しく変わっていく。

「桃花ちゃん、どうかした?」

あたしが、あんまり落書きしたから、ホントの顔がよく見えないとか?

「順ちゃん、まさか、もう吸われちゃったの?」

意味不明な言葉を呟いて、桃花ちゃんがプリクラから顔を上げた。

「え?」

「あ、いいの、いいの、今のは忘れて。どうせ、順ちゃんは覚えてないんだから」

「は?」

まさか、

桃花ちゃんの妄想は、

『野獣月人、美女の生き血を啜る』的な方向へ行っちゃってる?

あ、まさか、あの牙が、桃花ちゃんの妄想に火をつけちゃった?

「いやいや、月人君にも会うのが楽しみ♪」

桃花ちゃんは、そう言うと、可愛い巻き毛を揺らして笑った。