「早く、早く、人目につかないとこへ逃げよう!」

月人君に降ろされたのは、芝生広場脇のベンチ。

「嗚呼、恥ずかしかったね……」

見上げると、月人君はまだ不貞腐れた顔で眉間に皺を寄せていた。

「納得いかねぇ。俺ばっか、好きみてぇで遣り切れねぇ」

そう呟くと、あたしの隣りにドサッと座った。

もう……駄々っ子みたいだな……

あたしは、大っきな月人君が、急に愛しく感じられて思わず背中から抱きついた。

「月人君……大好きだよ」

背中に向かって囁いた。

と、月人君がビクッと震えたその瞬間、凄い力で前に引き寄せられた。

「な、なに?」

「ホントだな?」

「嘘なんてつかないよ」

「あぁ、よかったぁ」

そのままギュッと抱きしめられた。

ドクドク、ドクドク……

月人君の胸の鼓動が伝わってくる。

温っかい……

あたしはそっと、両手を月人君の背中に回した。

このまま、時間が止まればいいなぁ……

あたしは、そのまま目を閉じた。