―――私も成長しなきゃ。逃げてちゃダメだ。


前向きな気持ちになった。


私は悪いことなんかしてないんだから。


私が学校へ行けないのはおかしい。


その決意と共に、私はコソコソ隠れるのをやめ、立ちあがった。


「桜井さん!」


大きな声で透真を呼んだ。


何げない動作でこちらを見上げた透真の顔が、一瞬で固まった。


なに?


ふだん、どちらかと言えばポーカーフェイスの人が、驚愕の表情を浮かべたまま動きを止めている。


透真はもっとよく見ようとするみたいに、私の顔を見つめたまま、バルコニーに上がってきた。


「涼宮?」


透真が私にそう聞いた。


涼宮……。


鳴沢先生も私をそう呼んだ。


どうして透真が、先生の大切な人を知っているのだろう……。


「じゃなくて……、前園……由衣?」


ようやく私だと気づいたみたいに、透真がつぶやく。


「桜井さん、なんで『涼宮』って名前、知ってるの?」


「それは……」


透真は動揺を隠すように、私から目をそらした。


「お願い! 教えて! 私、その人に似てるせいで、ひどい目に遭ってるの」


透真の着ているツナギをつかみ、必死で頼んだ。