塾に行く気力がなくなった。


私は隣り町へ行くバスに乗るのをやめ、歩いて自宅に向かった。


―――どうしよう……。


憂鬱な気分で歩いている時、一台のセダンがスーッと私の横に停まった。


一瞬、先生の車かと思い、ドキッと心臓が跳ねた。


が、路肩に停まった高級車には見覚えがある。


「パパ……」


運転席に父の顔が見えた。


本当の父とは、月に一度だけ会って食事をする。


お互いそれが義務であるかのように、ランチをしながら、会わなかった一ヶ月間の出来事を話す。


けれど、夜、しかもこんな待ち伏せみたいな形で、父が私に会いに来たことはない。


―――なんだろう……。


不思議に思いながら、車に近づいた。


「乗りなさい」


窓越しにそう言われ、助手席に乗った。