「桜井透真さん。なんで、女子高生、きらいなの?」


冗談ぽく聞いてみたら、ジロリと横目で睨まれた。


「知りたきゃ教えてやる。付き合ってもない女子高生に『妊娠した』ってデマ流されて、前の職場に居られなくなったんだよ」


いきなりの激白。


「うそ……」


「しかも、その女の子の顔がアンタにそっくり」


「まじで?」


「わかったら、俺に見えない所でじっとしとけ」


そう言い放った桜井透真は、憮然としてガラスケースの前を離れた。


「待ってよ」


納得がいかない。


「私はその女の子じゃないんだから、顔が似てるってだけでそんな風に邪険にされるのは理不尽だと思う」


彼の背中に訴えると、建物を出ようとしていた透真の足がピタリと止まった。


クルリと振り返った顔の険しさに思わずひるむ。


「顔だけじゃない。良識がないところもよく似てる。俺はそういう人種に関わりたくない。わかったら、パスを恵んでもらったぐらいで俺になつくな」


ぐうの音も出ない。


「たしかに私は人としてしちゃいけないことしたけど……」


でも、その女の子みたいに誰かを陥れるようなことはしない。


どうすれば、彼女と違う人間だってわかってもらえるんだろう。


考えながら、ひたすら彼の後をついて行った。