あの飼育員は清流の眺めが広がるガラスケースの前に立っていた。


『オオサンショウウオ』

『分類:両生綱 有尾目 オオサンショウウオ科』


色や形はグロテスク。


けれど、どこか愛嬌のある生き物が水辺にたたずんでいる。


その様子をじっと見ている飼育員に声をかけた。


「あ、あの……。ありがとう……。でも、なんで……」


「それ、なかったら困るんだろ?」


ぶっきらぼうな言い方だった。


こっちを見ることすらしない。


なんでこんなによそよそしいんだろう……。


私もガラスの向こうを眺めるふりをして、チラチラと飼育員を観察した。


明奈が言うようにルックスは悪くない。


けど、性格が……。


そう思いながら、ふと、握り締めている年間パスを見た。


いい人なんだか、冷たい人なんだかわからない。


もしかしたら、素っ気ないだけ?


思い直して、もう一度、隣りの長身を観察。


名札には『桜井透真(さくらいとうま)』とある。


名前はかっこいいかも。