「就職したら、カネ返しに来い」


無表情にそう言った飼育員は、クルリと私に背を向けて歩き出した。


そこに取り残されそうになった私は、あわてて彼の背中を追った。


「ま、待って」


追いかけようとすると、飼育員はまたチッと舌打ちをした。


私に関わったことを後悔するみたいに。


なんで?


私の頭の中は疑問符だらけだった。


オセアニアゾーンの中央、ワニのプールの向こうに、ログハウスのような建物が見えてきた。


その入り口にふたつのプレート。


『Reptilia(爬虫類)』
『Amphibia(両生類)』


げっ……。


しまった。


ここって、爬虫類エリア?


私が一番苦手とする生き物たち。


私はこの動物園で唯一の未体験ゾーンに足を踏み入れてしまった。


分厚いガラスで仕切られたジオラマみたいな世界は、砂漠だったり、湿地帯だったり。


ううわ……。


色々なところに身を潜めているヘビやトカゲを見つけては、いちいちトリハダがたつ。