「とにかく、今日は正門から入って来い。見つけた以上は見逃せない」


冷ややかな目。


悲しみの涙が悔し涙に変わった。


信じられない。


ふつう、泣いてる人間にあんな冷たい態度とる?


思いやりのない人。


そんなんだから、ゾウだってなつかないんだ。


あんなヤツに涙を見せた自分が許せない。


これが逆ギレだってことは百も承知で腹がたつ。


「学生1枚!」


なけなしの千円札をチケット売り場のお姉さんの前に叩きつけた。


釣り銭を財布に入れながら、回転式のゲートを押して中に入った。


「あ……」


目の前にあの飼育員が立っている。


「な、何? まだ、なんか文句ある?」


虚勢をはる私に、飼育員が黙って1枚のカードを差し出した。


え?


おそるおそる受け取ったそれは、この動物園の年間パスポートだった。


一年間、自由に出入りできる。


うそ……。


「これ、くれるの?」


居場所を与えてもらったような気がして、胸がジーンと熱くなった。