先生は室内を見回すようにして部屋に入った。


そして、私の勉強机の前に立ってこちらを見た。


私は自分の部屋に入ることが出来ず、じっと入り口に立ち尽くしていた。


「お父さん、前園が学校休んでるの、知らないんだな」


その話をお父さんに聞かれたくなくて、私は部屋に入り、ドアを閉めた。


担任の顔に冷笑が浮かぶ。


「お父さんは君のこと、自慢の娘だって言っておられたよ」


それを聞いて、胸の奥がズキリと痛んだ。


「大事な娘が『あんなモノ』を持ち歩いてるって知ったら……お父さんは悲しまれるだろうね」


先生が私を責めるように言った。


『あれは明奈にもらいました』


そう喉元まで出かかった。


けど、動物園で見た彼女の寂しそうな顔を思い出すと言えなくなった。


「お父さんには……言わないで……ください」


震える声で、そう頼んだ。


「いいよ」


担任がひどく優しく笑う。


「こっちへおいで」


交換条件のように鳴沢先生が言った。