「あ。由衣、お帰り」


お父さんが私に気づいた。


逃げ出そうにも逃げられなくなった。


「由衣。家庭訪問があるんなら、ちゃんと言っといてくれないと。突然、先生が来られて、お父さんビックリしちゃったじゃないか」


家庭訪問?


「ほら、そんな所にボサッと突っ立ってないで、先生に挨拶しなさい」


そう言われても、私の足は動かなかった。


鳴沢先生は私の方を振り返りもしないで
「お父さん、ちょっと由衣さんの勉強部屋を見せてもらっていいですか?」
と、立ち上がった。


「もちろんです。どうぞ、どうぞ」


先生は私のことをどんな風にお父さんに話したんだろう。


お父さんはとても上機嫌だった。


少なくとも、学校をズル休みしていることはバレてないらしい。


「ほら、由衣。早く先生を御案内しなさい」


お父さんに急き立てられるようにして、リビングを出た。