お母さんが死んだ翌日、本当の父が私を迎えにきた。


それまで涙ひとつ見せずに喪主を務めていたお父さんが、泣きながら父に頼んだ。


「お願いです。僕から由衣まで取り上げないでください。お願いします」


お母さんが今のお父さんと再婚した時、私はもう中学生だった。


だから心の中は複雑で、お母さんの再婚にも抵抗があった。


けれど、喧嘩の絶えない両親を見ているよりは、新しい環境に身を置く方がマシな気がした。


新しいお父さんのことはそれまで『ただの同居人』としか思っていなかった。


私を手放したくないと泣き崩れるお父さんを見るまでは。


あの日から、私は新しいお父さんを本当の父だと思う努力を始めた。