天宮社長は、プライベートの話をするときは本名、仕事の話をするときはヒメと呼ぶ。
今あたしの事、”姫華”って呼んだ。
と言うことは、今から話す内容は前者。
やっぱりプライベートのことなんだ、ね。
「……社長、もしかして……やっぱり…」
そう言えば電話、取らない。
唯一あたし達を繋げていたメールの返信も素っ気なかった。
蓮は普段から絵文字なんかを使うタイプじゃない。
だけど、ここ最近のは酷かったんだ。
一行だけやら、一言だけやら。
終いにはそれすら無くなった。
『避けられてるって事?』
声にはならなかった。
辛すぎたから。
だって、社長とは連絡をとっているんでしょう?
帰国直後に飛んで来てくれたのに、名波さんとおかしな会話をしてから蓮は急変した。
凄く不安定な感じだった。
それから連絡がつかないし。
それはあたしの所為だったっていうこと?
また蓮は何かあたしに隠してるのは確か。
だけどまさか避けられてたなんて……。

