「あ…………、泣き止んだ」
口はあんぐり、目はぱしぱし。人差し指であたしを指した。
なに……?
っていうか、そんなことどうだっていいい。
「蓮はっ?ねぇ、社長!蓮はどうしちゃったの?さっきって、会ったの?ねぇっ!?」
勢いが止まらないあたしに、驚いたまま社長はフリーズ。
お説教中なのはちゃんとわかってる。
だけどあたしの耳は蓮しか聞き取れないの。
今は蓮が気になって、気になって仕方ない。
ついさっきまで脳内を支配してたデパ地下の事なんて、すっかり頭から消えていた。
「………そう言うことか」
少し間を開けてから、ふぅ、と肩を下ろす社長。
心なしか…笑ってる?
いえ、笑うとこじゃないから。天宮社長?あなたこそ空気読んでよ。
そんな思いを込めて、イケないとわかっていながら、社長を睨む。
ぼろぼろ溢れていた涙の洪水は、いつの間にか蓋をされていた。

