「全くヒメは何を考えてるんだ。契約だって大事な仕事なんだぞ」
「……ごめんなさい」
成瀬部長がサインを要求したのは他でもない、あたしだったんだよね。
イメージガールに起用されて、契約書にサインをって内容だったらしい。
それなのに生返事をしたばっかりに、話を聞いてないのが二人にバレて;
成瀬部長が帰ってから、あたしは天宮社長に説教を受けてるわけ。
「幸いあちらはヒメを気に入ってくださったから良かったものの、他の人なら契約決裂もんだぞ?」
「はい、ホントにごめんなさい」
最初から聞いてなかったわけじゃない。
さすがのあたしだってそこまで世間知らずじゃないよ。
だって……社長と成瀬部長ってば、無駄話が多いんだもん。
何処其処の宝石店の誰々がどうだとか、某有名プロダクションの売れっ子が誰と付き合ってるだとか。
そんなのあたしには関係ないもん。
聞いてるうちに疲れちゃったんだよ。

