はぁ、しんど…




それからおよそ2時間、お仕事の話をした。

……っていうか、している隣に居た?



天宮社長が勝手に”ブレスレット”を受けとってしまって、実質拒否権のないあたしは、よくわからない業界用語に疲れきっていた。

和気あいあいと交わされるオトナの会話に正直ついてけない。
まだ日の浅いあたしには、何の話なんだかさっぱりで、たまに振ってきたりしたけど適当に「はぃ、そうですね」なんて生返事ばかりを繰り返す。


自分の事なのにね。

あ~あ、柚亜さんならタイミング見計らって終わりにしてくれたのに。



「……では、此処にサインを」


お、もうすぐ終わるのかな?
今日はどこのスウィーツにしよう。
せっかく街まで来たんだから、”マルマル”の地下まで足をのばしちゃおうか。

ぐふふ、久しぶりに”マルマル”の地下を食べ歩いてやる。


「……ヒメ」


「はぃ、そうですね」


「は?」


「え?」


口癖になりつつあった生返事に、社長の低い声と半音高い成瀬部長の声がした。