度の入ってないレンズ越しに、不思議そうな瞳をこっちにむけてる。
「?美味しいね、豚骨」
尾道じゃなくて残念だったね。
天下一品って豪語してたのにね。
すると無言でラーメンを啜る蓮。
やっぱりどこかいつもと違う。
口数は多くないのは普通なんだけど、かもし出す空気が違うんだよ。
だけど、ここのおじいちゃんが作る豚骨ラーメン美味しいよ。
地元のタウン紙に載ったことあるんだからね!
あたし見たことあるもん。
「そらぁうまいじゃろぅ。わしの愛情が入ってるからのぅ」
真っ白い頭の、シワシワの顔を更にしわくちゃにしちゃったおじいちゃんが、カウンターからひょっこり顔を覗かせた。
「ホントに美味しいよ。このチャーシューなんてトロトロで最高だよ。沢山入ってるし」
ホントに沢山。
器からはみ出ちゃうくらいチャーシューで埋め尽くされてて、麺が見えないくらいだし。
これで500円なんて安すぎるよね。
「ふぉふぉ。そうか、そうか。でものぉお嬢ちゃんは特別じゃよ、べっぴんさんだからのぅ。どこぞの若造より5割増のチャーシューじゃ」
ご、5割増…。
だから偉いことになっちゃってるのか、あたしの。
ちらっと隣の蓮の器と見比べてみると、あからさまに違った。

