それは何分続いたんだろう。

もしかしたら、数秒のことなのかもしれない。

だけど、圧倒されてしまったあたしにはとても長く感じた。



「……ねぇ」

「喋んな」


いや、喋んなじゃなくて。

「退いてよ」

遠慮がちに言ってみた。


「………」



無視かい!

とにかくこの体を解放して!
意外としんどいんだからね、この体制!

おもいっきり押し退けようと、両手で蓮の胸辺りを押した。


けども;
びくともしない!

っていうか、お腹空いたし;
社長の所為で食べ損ねたまんまじゃん!


もう一度退けて欲しいと言おうとした時。


「んぐっ…」


唇を塞がれて、声とも言えない変な音が出た。


優しいキスなんかじゃなくて、いつもよりも荒っぽいキス。

閉じたままの唇を無理矢理舌でこじ開けると、無意識に食いしばっていた歯をなぞられて、強引に生暖かいものを差し込んでくる。


「…んんっ…あっ…」


蓮はそのままあたしの口内で暴れる。
舌を絡めてきたり、吸い込まれたり。

だけど、やっぱりそれはいつもと違って。