タバコを持つ手がぴくっと微かに動いた。
立ちっぱなしだったあたしは、鞄を床に下ろして、灰皿を取りにキッチンへ行き、それを蓮の前に静かに置いた。
「あんな名波さん、あたし初めて見たかも」
怒り方も大人だね、何て言いながら、蓮の隣に座る。
まっさらな白い灰皿にタバコを押し付けると、急に手が伸びてきた。
「イタッ……なに、どうしたの?」
蓮があたしに覆い被さっていた。
視界いっぱいに映る蓮の姿。
キュン…
い、今のなんなんだ!
こんな状況でさえキュンってなるあたしってどうなのっ?!
っていうか、なんで?
なんで押し倒されんの?
そんなスイッチ、あたし押してないよね?
「れ…ん……?」
依然黙ったまま、無表情でガン見してくる蓮。
だけどそれは真剣な面持ちで。
ブラックオーラな上に、そんな顔されたら……

