「ほら、切れちゃうよ?」
「う…うん」
「大事な用事かもしれないじゃない。あたしお手洗い行ってくるから」
「あっ、ちょっと…彩名!」
すっと立ち上がって、レディースマークの方へ歩いていっちゃった。
何か気を使わせちゃった。
戻ってきたら謝ろう。
そう思いながら、しつこく振動を繰り返してる小さな機械のボタンを押して、耳にあてた。
あぁ。短気だからキレるんだろうなぁ;
『おせぇ』
第一声に、とんでもなく低い声がした。
「ごごごごめんっ!ちょっと今友達と一緒で」
『あ?関係ねぇだろ。お前はツレが居たら電話に出ねぇのかよ』
「そうじゃなくて…だって…」
しどろもどろになりながら、言葉を絞り出す。
空気読めない蓮が悪いんじゃん。
しかも予想通りキレてるし。
『…んだよ。久しぶりに電話してやったのに』
えっ…。
『お前は淋しくねぇのかよ』
えっ?
『俺様が居なくても平気ですってか』
っていうか…なんかちょっと変じゃない?

