そもそもあたしが有名になるなんて…無いと思うんだけど。
………って、あたしの存在忘れてなかったんだね。
自分が空気と同化してるのかと思ったよ。
「……確かにこのコならうけると思うわ。あなたが居なくてもね?」
うひゃあ!ダメだって!
柴崎さん!火に油を注ぐ真似しちゃってるよ。
「そうかもね」
………あれ?
すんなり認めちゃった;
って!認めちゃダメだってば!
あたしは芸能界に居て良い程の人材じゃないから!
「ま、時期に凄いことになるわよ、このコ」
また、にいっと弧を描く唇。
書類の束を机の上にトンッと置くと、音もたてずに立ち上がる柴崎さん。
コツコツとヒールを鳴らしてドアを引くと、振り返って
「その書類、きちんと目を通しておいてくださいね?ではまた来週お会いしましょう」
そう言って、パタンと閉まった。
大量の企画書とシャネルの香りと…………顔面深海魚と化した柚亜さんを残して。

