無理矢理重い腰を上げる。
遠い……。
うちの玄関ってこんなに遠かったんだろうか。
身体のあちこちが痛いし、この上なく眠い。
今あたしはボロボロなのに。
凄くやる気ゼロなのに。
朝っぱらから来客なんてついてないよ。
誰なの?非常識人。
何度もなるチャイムに苛々しながら、やっとの思いで辿り着いたドアを開ける。
カチャ――…
「いつまで寝てんだっ………ってお前……」
黒い革靴が喋った。
「いや……っと…姫華…。だよな?」
聞き覚えがある声と、”姫華”というワードに反応して、視線を上げると…
久しぶりに見た。
白いカッターシャツを第2ボタンまで開けて、黒いネクタイをする、可憐な男。
うちの学校の制服姿の、男。約1名。
人がパニクってる時に、わざわざ家に来たこの人がムカつく。
確かにムカついてるんだけど。

