フォークを持ったまま固まるあたしの椅子を引かれて。


「これは危ねぇな」


耳元で囁いたかと思うと、右手にそっと触れる。

するりと抜かれたそれを、蓮がテーブルに置く。


そして、ふわっと身体が宙に浮いた。


「きゃっ」


「ほら、ちゃんと捕まって。お姫様」


極上の笑みを浮かべた蓮に、抱き上げられたんだ。


両方の腕を首に絡み付けて、さっきよりも近い位置にある漆黒の双眼をみつめる。


だっ……ダメ。


心臓飛び出しちゃう。

あたし鼻血出てないかしら。


さっきまで萌えてたのに、今度は別の意味になっちゃって。



っていうか。

足を進めたのは、って正確には蓮の足なんだけど。

とにかくその先は、お昼に入った部屋でして。

あの、恐ろしく高いシャンデリアに、キングサイズのふかふかベッド。


…………それはまずい。
一応これでも乙女だし。
歩き回った所為で汗でベタベタなんだって。


こんな体で高級ベッドに寝る訳にはいきません!